スタートアップ必見!設立後の税金と社会保険について解説
目次
会社設立手続きの概要
昨今の起業ブームで起業を志す人が大分増えてまいりました。
弊所にも会社設立に関するご相談が多く寄せられます。
しかし、具体的にどのようなプロセスを得て会社手続きをすればいいか
分からないのが普通かと思います。
そこで、今回は会社設立のプロセスについてご説明したいと思います。
ここでは、主に株式会社の設立手続きについてみていきたいと思います。
大まかに言ってしまえば会社の設立手続きは下記のステップを得て行われます。
①設立内容の決定
②事業目的の検討
③印鑑の作成
④定款認証
⑤出資金の払い込み
⑥登記申請
⑦会社設立後の各種届出
それでは、以下順番にご説明していきます。
設立内容の決定
設立内容で決めなければいけないことは、下記の通りです。
- 会社名
- 本店所在地
- 資本金
- 設立日
- 会計年度
- 事業目的
- 株主の構成(発起人の決定)
- 役員の構成
- 1株当たりの金額
- 発行済可能株式総数
- 取締役会の設置の有無
- 役員の任期
- 株式譲渡制限の有無
これらの情報は定款を作る際に必要となります。
「定款」とは、会社名や事業目的など会社の基本原則を定めたものとなります。
事業目的の決定
後ほどご説明しますが「定款」は公証人役場で認証をしてもらう必要がありますが、その際に不備があると認められます。従ってある程度、決まった形式で記載していく必要があります。
なかでも、事業目的についてはある程度しっかり考えることが求められます。
何故なら、会社の事業範囲は定款記載の目的に限定されてしまうからです。
また、許認可が必要な事業については、定款の事業目的に当該事業内容が記載されていなければ許認可が降りない可能性もあります。
例えば、下記のような事業を営む場合、各行政当局への届け出が必要となります。
- 飲食店:喫茶店 保健所の許可が必要
- ペットショップ :保険所への届出が必要
- 美容院:保健所の確認が必要
- 古物販売、リサイクル業:警察署の許可が必要
- 中古車売買:警察署の許可が必要
- 金券ショップ:警察署の許可が必要
- 薬局:都道府県の許可が必要
- 建設業:都道府県の許可
- 酒の販売:税務署の免許
- 運送業:陸運支局の許可
- 自動車整備業:陸運支局の認証
- 派遣業(一般):厚生労働省の許可
- 派遣業(特定):厚生労働省への届出
許認可が必要な業種は1000以上あると言われており、許認可が必要でないかどうか確認することが求められます。
また、最後に「上記に附帯する一切の業務」という文言は通常は記載します。
印鑑の作成
設立の際に会社の印鑑が必要になりますので、印鑑は早めに作成しておいたほうがいいでしょう。また、設立を行う発起人が個人の実印が求められますので、市役所等で実印登録も
行っておきましょう。
一口に会社の印鑑と言っても、種類があるので注意が必要です。
まず、印鑑並びに署名・記名の法的効力についてご説明します。
まず「署名」と「記名」の違いを抑えてください。
「署名」と「記名」は明確に異なり、「署名」は、当事者本人が氏名を手書きすることです。一方、「記名」は、手書きではなく代筆、ゴム印、ワープロで印刷して氏名を表示することです。
署名は筆跡鑑定することで、当事者本人であるかどうかを鑑定することができるので証拠能力がありますが、記名の場合は証拠能力がありません。
契約書の書類などに、氏名の後に印鑑を押しますが、署名した後に印鑑を押すことを、「署名捺印」と言い、記名した後に印鑑を押すことを「記名押印」と言い使い分けます。
結論から先に言うと、署名捺印 > 署名のみ > 記名押印 > 記名のみ(正式な効力なし)の順で証拠能力に違いがでます。
署名か記名かで大きな違いがでるのに対して、使用する印鑑の違いによる証拠能力の違いは、法律上はありません。
使用する印鑑によって法律上の効力が変わることはありません。
従って、印鑑は慎重に管理する必要があります。
では、ここで会社で一般的に使用する印鑑について説明しておきます。
1.会社実印
会社実印は「代表者印」とも言われ、本店所在地の法務局へ設立登記申請時や契約書を作成する際に使用します。
2.会社銀行印
銀行へ届け出て使用するのが銀行印です。
実印とは別に銀行専用の届出印を作成するのが一般的です。
3.角印
四角形の中に会社名が彫刻された印で、請求書等を発行した際に押印するのが一般的です。
4.住所印
会社名に加えて会社住所、電話番号、その他必要な情報が彫刻された印です。
郵送物等を送る際に使用します。
定款認証
「定款」は、作成後に「公証人役場」で認証してもらう必要があります。
定款の内容に不備がないか等を調べるためです。
定款に記載する事項は大きく分けて3つあります。
a:絶対に記載しなければいけない事項(絶対的記載事項)
・目的
・商号
・本店の所在地
・会社の設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人の氏名または名称および住所
・発行可能株式総数 ※
※ 発行可能株式総数は、会社法第27条で定められた絶対的記載事項には含まれませんが、原子定款に記載をしなかった場合、会社設立(登記)までの間に、発起設立の場合には発起人全員が同意したうえで、定款に追記をしなければなりません。
b:記載すると法的な効力が発効する事項(相対的記載事項)
・株式の譲渡制限に関する定め
・取締役等の人気の伸長
・公告の方法等々
c:必ずしも記載しなくても良い事項(任意的記載事項)
絶対的記載事項については一つでも欠けていると定款自体が無効になってしまい
公証人役場の認証を受けることはできません。
なお定款の認証には
株主全員の印鑑証明
収入印紙4万円
定款認証手数料5万円
定款3部
を公証人役場に提出します。
資本金の振込
定款には、一株がいくらで、各発起人が何株分を出資するかなどを記載する必要がありますが、定款で決定された情報に基づいて資本金の払い込みを行います。
この際、資本金の振込は発起人の口座に振り込みます。
会社の口座は会社の設立後でないと作成はできません。
なお、振り込む際には、資本金額を振り込まなければなりません。
例えば、資本金を100万円にしたければ、100万円を振り込む必要があります。
また、振込み人の氏名が印字されている必要があります。
振込みが済むと、振り込んだことが記載されている通帳のコピーが「払い込みの証明」になります。
また、金融機関名・支店名・口座番号・口座名義人が記載されたページ
のコピーも併せて必要になります。
「払込みがあったことを証する書面と上記の通帳のコピーに会社の実印を押します。
登記
さて、いよいよ最後に登記となります。登記が完了すると会社設立完了となります。
登記は法務局で行います。
法務局に提出する資料は下記の通りとなります。
・定款
・資本金の払いこみがあったことを証する書面(証明書)
・資本金の額の計上に関する証明書
・設立登記申請書
・代表取締役の印鑑証明等
・印鑑届出書
提出後、登記官による審査が行われます。
問題が無ければ登記完了となります。
その後、各行政機関の届け出を行うこととなります。
具体的には、税務署、都道府県税事務所、市役所、社会保険事務所、ハローワーク、労働基準監督署などに設立関係の書類を提出します。
これらの行政機関に対する届け出は決まった期間に行う必要があります。また、各行政機関から通知が来るわけでもなく、自ら届け出る必要があります。
会社設立後の各種届出
会社設立後に必要な届け出は、-1:税金関係、-2:労働保険関係、-3:社会保険関係の3つがあります。
税務署へ届け出る書類
法人設立届出書
会社設立後2か月以内に、本店所在地の税務署に下記書類を提出する必要があります。
・登記簿謄本
・定款の写し
・設立時の貸借対照表
・株主名簿の写し(株式会社の場合)
・現物出資があるときは出資者の氏名・出資金額等を記載した書類
青色申告の承認申請書
青色申告を行うことで税務上の恩典を受けることが出来ます。提出期限は、会社設立から3カ月以内です。
但し、この期間に事業年度が終わる場合は事業年度内です。
給与支払事務所等の開設届出書
給与を費用として扱うために必要な手続きです。
提出期限は、第1回給与支払日までです。
棚卸資産の評価方法の届出書および減価償却資産の償却方法の届出書(任意)
棚卸資産の評価方法の届出書は、棚卸資産の評価方法を届け出る書類です。
減価償却資産の償却方法の届出書は、減価償却資産の減価償却方法を届け出る書類です。
期限は、第1期の確定申告の提出期限までです。なお、届け出なかった場合、棚卸資産の評価方法は、自動的に「最終仕入原価法」となります。また、減価償却資産の償却方法は、自動的に「定率法」となります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 (任意)
通常、毎月納付する源泉所得税を、従業員が常時10人未満の会社は
半年に一度まとめて納税できる制度(源泉所得税の納期の特例)があります。
この制度を利用したい場合に申請します。
提出期限は、特例を受けたいときです。
適用は、提出した日の翌月に支払う給与等からが対象となります。
市区町村役場または都道府県税事務所へ届け出る書類
住民税及び事業税など、地方税関係の書類を提出します。
都道府県によって、書式や提出期限が若干異なるので各都道府県に確認する必要があります。
法人設立届出書
都道府県税事務所、および市区町村役場(東京都を除く)に、都道府県税事務所は、会社設立後15日から1カ月以内、市区町村役場は、会社設立の日から2カ月以内に下記書類を提出します。
・定款の写し
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
労基署へ提出する書類(労働保険関係)
従業員を一人でも雇用した場合、労働基準監督署へ以下の書類を届け出なければなりません。提出書類は以下の通りです。
保険関係設立届
提出期限は労働保険関係が成立(従業員を雇用)した日の翌日から10日以内です。労働基準監督署に届け出ます。なお、添付書類は下記の通りです。
- 登記謄本原本
- 労務者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
労働保険料申告書
保険関係が成立した日から50日以内に提出します。
ハローワークへ提出する書類(雇用保険関係)
提出書類は以下の通りです。
雇用保険適用事業所設置届
会社設立時から従業員を雇う場合は設立日の翌日から10日以内、設立した後に従業員を雇うことになった場合は、雇用した日の翌日から10日以内に届け出ます。
雇用保険被保険者資格取得届
新しく従業員を雇用したときに、雇用した月の翌月の10日までに提出します。
提出期限は労働保険関係が成立(従業員を雇用)した日の翌日から10日以内です。なお、添付書類は下記の通りです。
・履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
・事業所の賃貸借契約書
・労働者名簿
・賃金台帳
・出勤簿またはタイムカード
詳しくは下記URLをご参照ください
http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/daijin/hoken/980916_2.htm
年金事務所へ提出する書類(社会保険関係)
会社の場合は、その規模にかかわらず、会社設立と同時にすべての会社が社会保険へと年金の加入が義務づけられています。
健康保険・厚生年金保険新規適用届
はじめて健康保険・厚生年金に加入する時に提出します。
添付書類は登記簿謄本となります。
申請書は日本年金機構のホームページからダウンロードが可能です。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/jigyosho/20141205.html
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
新たに役員・従業員を採用した際に届け出ます。
届出書は日本年金機構のホームページからダウンロードが可能です。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hihokensha/20140718.html
健康保険被扶養者(異動)届
役員・従業員に扶養家族(配偶者や子供、父母など)がいる場合に提出します。被扶養者届のほか、該当する被扶養者の健康保険被保険者証を添付します。扶養者の年間所得が103万円以上130万円未満の場合は、「課税(非課税)証明書」の添付も必要です
届出書は日本年金機構のホームページからダウンロードが可能です。
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/kenpo-todoke/hihokensha/20141224.html
終わりに
これまで見たきたように、会社設立には、色々な手続が必要となり、全部ひとりでやろうとすると大変な労力が要求されます。そのため、税理士・社労士・司法書士・行政書士等の専門家に相談したほうがスムーズに会社設立が行えます。幣所でもあなたの夢の実現のために会社設立手続きを承っております。是非お気軽にご相談ください!