節税とは何か?スタートアップ のための節税の基本的考え方
目次
節税にも色々
会社を設立して、順調に事業が伸びて利益が出てくると、税金を払いたくなくて
節税に励む社長さんが多くいらっしゃいます。しかし、節税といいつつ本来不要な
モノを買ったり、夜の歓楽街でお金を使ったりと、無駄遣いにも見える支出をされている社長さんも
お見かけします。お金を支出すると、確かに税金も減りますが、一方会社の資金も確実に流出していきます。税金を支払うのを惜しむあまり、不要なものを買ってしまっていては、会社にお金が残らなくなってしまいます。まずは、この事実をしっかり理解して頂いたうえで、節税にも色んな方法があることを説明していきます。
まずは法人税の計算方法を理解しましょう
まずは法人税の仕組みについて簡単に説明したいと思います。法人税は「課税所得」に対して課せられます。概ね、課税所得=利益と考えてください。また、益金≒収益、損金≒費用と考えてください。
・課税所得=益金(売上等)-損金(売上原価・経費・損失など)
・法人税=課税所得×法定実効税率
つまり、課税所得を少なくすれば法人税も少なくなります。節税するには、この益金、つまり収益の金額を減らすか、損金つまり費用の金額を大きくする必要があります。ここでは、主にこの費用に注目した節税策をご説明していきます。
節税にも種類がある
一口に節税といっても、追加の資金流出が伴わない節税と、追加の資金流出が伴う節税に分けられます。
追加の資金流出が伴わない節税とは, 既に支出したものあるいは支出が必要なものの中から より多く費用化できるものがないか検討する 方法です。
また、資金流出が伴う節税も、将来の投資的要素を持つものと、福利厚生的な要素をもつもの、単なる消費に分けられます。
1.追加の資金が流出しない節税
①・税額控除制度の検討
②・固定資産の早期費用化
③・資産の評価減の利用検討
④・発生主義の適用検討
⑤・規定類の整備
⑥・決算期の変更
⑦・前払費用
2.追加の資金が流出する節税
①・将来の投資の前倒し実行
②・経営者・役員・従業員の福利厚生に資するもの
③・より多く消費する
多くの社長さんが節税というと、「より多く消費する」からスタートしてしまいますが、節税を行いなら、これから説明するポイントを意識したうえで節税を行うといいと思います。
また、節税をすると利益が減ってしまいます。銀行融資を検討するなら利益が減ってしまうと融資額にも影響が出てしまいますし、利益が減ると会社に残るお金が少なくなります。私見では、税金を支払ってでも会社にお金を残した方が、財務が安定して、より強固な
経営基盤を作れることになると思ってます。この点については、また別の機会にご説明したいと思います。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その①:税額控除制度の検討
所得金額に税率を乗じて算定した法人税の額から、一定のルールに従って税額を差し引くことができます。これを税額控除といいます。代表的なものは以下の3つとなります。
この節税方法は、設備投資を行う、あるいは試験研究を行っている、従業員の給与を上げて定着率の向上を図りたい場合等、経営目的を達成するためにある程度の支出を行った場合に検討すべき方法です。
a.中小企業投資促進税制
b.試験研究税制
c.所得拡大促進税制・雇用促進税制
それでは、順番にご説明していきます。
中小企業投資促進税
中小企業投資促進税制は、中小企業における生産性向上等を図るため、一定の設備投資を行った場合に、
一定の金額を法人税額から差し引く税額控除(7%)という制度、又は通常の償却費の計算よりも多く費用に計上できる特別償却(30%)という制度の適用を認める措置です。
下記の設備が対象となります。
・機械及び装置【1台160万以上】
・測定工具及び検査工具【1台120万以上、1台30万以上かつ複数合計120万以上】
・一定のソフトウェア【一のソフトウェアが70万以上、複数合計70万以上】
※複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く
・貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
・内航船舶(取得価格の75%が対象)
また、下記事業者が対象
・個人事業主、資本金3,000万以下の中小企業: 30%特別償却 又は 7%税額控除
・資本金3,000万超の中小企業 :30%特別償却となります。
簡単に説明しますと、上記、条件を満たす事業者が設備投資を行うと法人税額を7%減額することができます。
又は法人税額を7 パーセント減額することに代えて通常よりも多くの減価償却費を計上することができます。
試験研究税制
・試験研究費の総額に係る税額控除制度
「試験研究費の総額に係る税額控除制度」は、その事業年度において損金の額に算入される試験研究費の額がある場合に、その試験研究費の額の一定割合の金額をその事業年度の法人税額から控除することを認めるものうぃます。
この制度の対象となる試験研究費の額とは、製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する原材料費、人件費及び経費のほか、他の者に試験研究を委託するために支払う費用も含まれますただ。但し、試験研究に充てるために他の者から支払を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額が試験研究費の額となります。
気になる控除額ですが、これは「試験研究費の総額 × 控除率」によって求められます。控除率は試験研究費割合が10%以上の場合には10%ですが、試験研究費割合が10%未満の場合は「試験研究費割合 × 0.2 + 8%」で求められます。なお、上限は法人税額の25%までとなっています。
・特別試験研究に係る税額控除制度
この制度は基本制度である(1)の「試験研究費の総額に係る税額控除制度」と比べると、対象となる研究がより限定されており、そのかわり控除率も高くなっているという特徴があります。 特別試験研究に該当するのは、次のような研究です。
・国や大学の研究機関と共同で行う試験研究
・国や大学の研究機関に委託して行う試験研究
・民間企業と一定の契約のもと共同で行う試験研究
・中小企業に一定の契約のもと委託して行う試験研究
・技術研究組合と一定の契約のもと共同で行う試験研究
また控除率は内容によって、30%、20%の2種類になり法人税の5%までが控除額の上限となります
・中小企業技術基盤強化税制
資本金が1億円以下の会社(大会社の子会社を除く)が適用できる制度で、中小企業向けに控除割合を増やした制度となります。
対象となる研究は「試験研究費の総額に係る税額控除制度」に準じますが、控除率は一律12%と高く設定されています。なお、上限はやはり法人税額の25%までとなっています。
・試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度
この制度を適用する際には、「増加型」と「高水準型」のいずれかを選択することになります。増加型は、次の2つの条件をともに満たす場合に適用することができます。
・「その年の試験研究費 - 前年の試験研究費」(増加試験研究費)>「過去3年の試験研究費の平均額 × 5%」
・「その年の試験研究費」>「過去2年の試験研究費のうち多い方」
控除額は増加試験研究費の額の30%で上限は法人税の10%です。 高水準型は、次の条件を満たす場合に適用できます。
・「その年の試験研究費」>「その年を含む過去4年の平均売上 × 10%」
控除額は、上の式での超過分に「(試験研究費割合 - 10%) × 0.2」を掛けることで求められます。
・注意点
そもそも、研究開発税制を適用するためには、研究開発費を集計する経理処理が必要となります。通常、原材料費、人件費、業務委託費などの各勘定科目に計上されているもので、あらかじめ研究開発活動を定義して、損金を集計する仕組みを用意する必要となります。つまり、手間のかかる制度となります。
所得拡大促進税制
所得拡大促進税制は、企業が一定の要件を満たしながら国内雇用者に対する給与を増加させた場合に、法人税額の10%(中小企業は20%)を上限として、給与等支給増加額の一定割合を法人税から税額控除できる制度です。所得拡大促進税制の適用対象は、2013年4月1日から2018年3月31日までの期間内に開始する各事業年度です。所得拡大促進税制を利用するにあたって、事前申請を行う必要はありません。ただし、法人税の申告の際に給与等支給増加額や控除を受ける金額に関する明細書を添付することが必要です。
所得拡大促進税制の適用を受けるためには、以下の3つの要件すべてを満たすことが必要です。
・給与等支給額が基準年度より一定割合以上増加していること
給与等支給額とは、適用年度の所得の金額の計算上損金算入される国内雇用者に対する給与の総額のことをいい、役員報酬や役員の親族等に支払われる給与などは含みません。
基準年度とは、2013年4月1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の「直前」の事業年度のことをいいます。例えば3月決算法人の場合、2012年4月1日から2013年3月31日が基準年度となります。
増加すべき割合は適用年度により異なり、2017年4月1日から2018年3月31日までの間に開始する事業年度の場合、当該年度の給与等支給額が基準年度と比較して大企業では5%以上、中小企業では3%以上増加していることが必要です。
・給与等支給額が前年度の給与等支給額以上であること
・平均給与等支給額が、前年度の平均給与等支給額を上回ること
平均給与等支給額とは、適用年度の「継続雇用者」に対する給与等支給額を、当該継続雇用者の月ごと延べ人数の合計で割った金額のことをいいます。
継続雇用者とは、適用年度およびその前年度において給与等の支給を受けた国内雇用者のことを指し、適用年度に入社した者や前年度中の退職者は継続雇用者に含みません。
大企業の場合、平均給与等支給額が前年度より2%以上増加していることが必要です。中小企業の場合、平均給与等支給額が前年度を上回っていれば問題ありませんが、前年度より2%以上増加していた場合はさらなる控除を受けられる可能性があります。
平成29年度の税制改正
大企業の場合
平成29年度税制改正前は、平均給与等支給額が前年度の平均給与等支給額を上回っていれば、基準年度からの増加額の10%について法人税の控除を受けることができました。
改正後は、平均給与等支給額が前年度の平均給与等支給額より2%以上増加していなければ所得拡大促進税制の対象とはならなくなった一方、法人税の控除額については、基準年度からの増加額の10%に加えて前年度からの増加額の2%が上乗せされることとなり、より多くの控除が受けられるようになっています。
中小企業の場合
改正前は、平均給与等支給額が前年度の平均給与等支給額を上回っていれば、基準年度からの増加額の10%について法人税の控除を受けることができました。
改正後も、平均給与等支給額が前年度の平均給与等支給額を上回っていれば、改正前と同様の計算方法で法人税の控除を受けることができます。
さらに、平均給与等支給額が前年度から2%以上増加している場合、基準年度からの増加額の10%に加えて前年度からの増加額の12%が税額控除されることとなり、非常に多くの税額控除が受けられるようになっています。
税額控除制度のまとめ
設備投資や人件費上昇等、多額かつ長期に渡り企業経営にインパクトを与える支出を行う際に、税務上より有利な方法がないか検討してみましょう。
税額控除制度は、節税を第1目的として行うというよりは、あくまでも経営上の目的を達成するために必要な支出がある場合に、その利用を検討してみるという位置づけです。
節税になるからと言って、不要な設備投資や給与引き上げを行うことは、後々資金繰りを悪化させる可能性があるため、やめておいた方が無難です。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その②:持っているものを使おう(固定資産編)
次に検討したいのが、固定資産や棚卸資産等々、既に持っている資産や制度を利用して、より早期に費用化できないか?検討することです。
固定資産の早期費用化
固定資産は、原則として「減価償却」といわれるプロセスを経て費用化されます。
減価償却とは、ある期間に渡り少しずつ費用化することを言います。
この期間のことを耐用年数といい、耐用年数が短ければ短いほど単年度の損金が増えて短期間で節税が可能となります。
また、計算方法は主に2種類あり、定額法と定率法という方法があり、節税効果が高いのは、定額法に比べて早期に沢山の金額を償却することが出来る定率法となります。
つまり、「できるだけ短期間に定率法で損金計算できるようにする」こと「定額法と定率法の選択適用が認められれる資産は定率法を採用」が固定資産に関する節税対策となります。
固定資産を取得する場合にかかる諸経費のうち、いくつかのものは固定資産の取得価額に含めずに即時に費用として処理することが出来ますが、資産の取得価額に含めてしまうと法定耐用年数の期間に渡って分割して費用化されてしまいます。取得価額に含めなくていい費用は下記となります。以下、タックスアンサーからの抜粋となります。
(1) 次のような租税公課等
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 新増設に係る事業所税
ハ 登録免許税その他登記や登録のために要する費用
(2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等でその建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用
(3) いったん結んだ減価償却資産の取得に関する契約を解除して、他の減価償却資産を取得することにした場合に支出する違約金
(4) 減価償却資産を取得するための借入金の利子(使用を開始するまでの期間に係る部分)
(注) 使用を開始した後の期間に係る借入金の利子は、期間の経過に応じて損金の額に算入します。
(5) 割賦販売契約などによって購入した資産の取得価額のうち、契約において購入代価と割賦期間分の利息や代金回収のための費用等が明らかに区分されている場合のその利息や費用
耐用年数の短縮化
設備投資を行った際に支払額が一括して固定資産として計上されていることがあります。
しかし、明細を見ると耐用年数が異なる資産に分類することが可能なケースがあります。
経理処理場は、一括して計上したほうが手間が少なくていいですが、その際一番耐用年数が長い
資産に合わせて減価償却を行うことになります。複数に分けた方が、耐用年数が短くなる
ケースが多いので、大きな設備投資を行った際には、耐用年数が異なる資産がないか確認してみましょう。
事務所・社宅の敷金・保証金の返還不能部分の償却
事務所や社宅を借りる際に敷金・保証金を支払っていると思いますが、この敷金・保証金のうち、一部ないし全部が退去した際に返還されない部分は、5年以内に償却することが出来ます。
-4.30万円未満の減価償却資産の購入(中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(ただし大規模法人の子会社等を除く)などは,30万円未満の減価償却資産を購入した場合にその取得価額を全額損金処理することができます(年間合計300万円まで)。
ただし、法人税法上は一括償却資産と呼ばれる10万円以上20万円未満の減価償却資産を3年間で償却する場合には、償却資産税の申告対象外となりますが、少額資産の特例を適用した場合は償却資産税の申告対象となってしまいますので注意が必要です(償却資産税は資産の評価額が150万円未満の場合には申告不要です)。
事業に利用してない固定資産の廃棄または売却
事業に利用していない固定資産があったら、売却又は廃棄してしまいましょう。
売却価格が帳簿価格を下回っている場合には売却損を計上できますし、廃棄した場合には帳簿価格を廃棄損として計上することができます。なお、廃棄した場合には産業廃棄物業者などより廃棄証明書を入手しておくと、将来の税務調査の際に廃棄の事実を証明することができます。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その③:持っているものを使おう(売上債権編)
売掛金、受取手形、在庫、有価証券など資産計上されている項目について、資産の評価が毀損したことによって
評価損を計上できる余地がないか検討してみましょう。
売掛金・受取手形の貸し倒れ処理
売掛金・受取手形のうち回収不能な部分は貸倒損失として、また回収見込みが低いものについては貸倒引当金として費用を計上できます。
a:貸倒損失を計上できる場合
以下のケースに該当する場合、その金額を貸倒損失として計上することができます。
1:法定整理により債権額の切り捨てが決まった場合、その債権額
2:法的整理によらない場合に債権者集会等で債権額の切り捨てが決まった場合、その債権額
3: 取引先の債務超過が相当期間継続してしまい、その間、回収努力をしたが未回収の場合に、内容証明郵便等 で債務免除を伝達した場合、その債務免除を伝達した金額
4:債務者について破産、強制和議、強制執行、整理、死亡、行方不明、債務超過、天災事故、経済事情の急 変等の事実等、回収不能の事実が明らかになった場合
5:継続的に取引を行っていた取引先が、その資産状況、支払能力等が悪化したためその後の取引を停止するに 至った場合で、回収予定日又は最後の回収日から1年以上経過した債権について、債権金額から営業保証金な どの担保を差し引いた金額。ただし、決算書上は1円の備忘価額を付さなければなりません。
b:貸倒引当金を計上できる場合
以下のケースに該当する場合、その金額を貸倒引当金として計上できます。
貸倒引当金とは、実際には債権が貸倒てはいないものの、その可能性が極めて高い場合に
計上する費用の事を言います。
1:債権につき、更生計画認可の決定・再生計画認可の決定・特別清算に係る協定の認可の決定等が発生した場 合、債権額から5年以内に回収可能な額を控除した金額を貸倒引当金として計上出来ます。
2:金銭債権に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由により、当該金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合に、債権金額から担保額を控除した金額を貸倒引当金として計上出来ます。
3:債権につき、更生手続開始の申立て・再生手続開始の申立て ・破産手続開始の申立て 特別清算開始の申立て
があった場合に、担保・相殺可能な債務がある場合には、債権金額から担保・相殺可能な債務を控除した金額
を控除した金額の50%を貸倒引当金として計上出来ます。
4:中小法人の場合は、貸倒懸念のない債権についても、法定繰入率を用いて貸倒引当金を計上出来ます。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その④:持っているものを使おう(棚卸資産編)
在庫を多く抱えて商売をされている方は在庫の評価損を計上出来ないか検討してみて
ください。
会社が持っている在庫は基本的には、決算のときに評価損を計上することができません。しかし、以下のような場合には評価損として費用に計上することが出来ます。
◎. 災害等で著しく損傷したこと
◎. 著しく陳腐化したこと
◎. 破損や型崩れ、棚ざらし、品質変化によって通常の方法によって販売できないようになったこと。
評価損を計上する場合には、届け出が必要となります。また、原価割れで在庫を売却した事実が
必要となります。
例えば、傷んだ商品や売れ残った商品をセール等で原価割れした価額で販売した場合に、一部が売れて、一部が在庫として残ったとします。この場合、売れ残った在庫について、原価割れした販売価額まで評価損を計上する
ことが出来ます。
また、廃棄した場合も廃棄した在庫について廃棄損を計上出来ます。この場合、廃棄証明書を残すようにしましょう。破損とか棚ざらしの場合などには、写真をとって証拠として残しておくようにしましょう。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その⑤:持っているものを使おう(有価証券編)
株式や債券を保有している場合で、損失が生じている銘柄については、評価損を計上出来る場合があります。
上場有価証券
会社の決算日時点の時価が取得価額と比べて50%を超えて下落しており、かつ、将来に渡って回復の見込みが無い場合に、取得価額と時価との差額を有価証券評価損として費用を計上出来ます。なお、回復可能性の判定は
会社が合理的な判定基準に則って処理している限り、その判定基準が尊重されます。(会社の業績推移・
その会社の属するマーケット状況・株式市場全体の推移等を総合的に勘案して判断する)。
非上場有価証券
非上場有価証券については時価は存在しませんが、一定の場合に評価損の計上が認められます。
発行法人が特別清算など法的整理の決定があった場合や、1株当たりの純資産価格が取得時点と比べておおむね50%以上下落した場合に取得価額と実質評価額との差額を評価損として計上できます。
株主の権利として毎年決算書を入手できるので、非上場有価証券については、毎決算期毎に1株当たりの純資産価額を算定し(純資産額÷発行済み株式総数で算定)、「おおむね50%以上」の基準を満たしているかどうかの確認する事が望ましいです。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その⑥:持っているものを使おう(発生主義編)
未払金・未払費用を今期に計上する
今期中に発生した費用ではあるものの、支払いをするのが翌期になる費用がありますよね?
例えば、仕入代金、電話代など通信費、広告宣伝費、リース料、保険料、消耗品費等が該当します。
多くの中小企業が、発生した期間に費用計上せず(発生主義)、支払った時期に費用計上(請求書主義)していますが、是非発生主義で計上することを検討してみてください。
まずは、人件費について、未払計上出来ないか検討してみてください。
例えば、給与の締め日が20日で、支給が翌月15日とします。
この場合、21日~月末までの給与を翌 月に支払うことになると思いますが、
決算をする上では、この期間の給与を未払給与として計上できます。
また人件費については、社会保険料も未払計上することができます。
健康保険と厚生年金等の社会保険料については、当月分を翌月末に支払うルールです。
したがって、正しい会計処理を行うと、毎月1ヶ月分が必ず未払金となります。
ということは、8 月決算の会社の場合、9 月末に落ちる社会保険料を未払経費として
計上することができます。。
あと、例えば月末日が土日祝日などで、翌月1 日に引落し
される場合があります。こんな場合には、 月1 日に引き落とされた分と、翌月末日
に引き落とされた分の2 か月分を未払計上できます。
多くの会社さんが見落としているポイントですが、やらない手はありません。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その⑦:持っているものを使おう(規定類の整備編)
出張手当
役員や使用人に支給する手当は、原則として給与所得となります。
具体的には、残業手当や休日出勤手当、職務手当等のほか、家族手当、住宅手当なども給与所得となります。
しかし、例外として、次のような手当は所得税が非課税となると規定されています。
・通勤手当のうち、一定金額以下のもの
・転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
・宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの
この「転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの」がいわゆる出張旅費・日当と呼ばれるものです。法人の場合、出張旅費規程を作成して、(役員だけでなく)全ての従業員にその規定に則った金額が支給されていれば、出張旅費・日当として支給が可能となります。
出張日当は消費税の課税対象ともなりますし、また経営者や従業員の所得税負担も少なくなります。
例えば、高額な役員報酬を取っている社長は所得税の税率は40%、住民税も合わせると50%を上回ります。
ところが、旅費日当は所得の扱いにならず税金がかからないので出張日当がそのまま自分の手元に残るのです。金額があまりに高額だと税務署に否認される可能性がありますが、1 日2 万円くらいまでなら特に問題はないとされています。
出張の多い会社は是非検討してみてください。
社宅規定
従業員や役員・社長の住んでいる住宅の家賃を「社宅にする」という方法を試用することで家賃を
会社の経費として計上することが可能となります。
家賃の全額を会社の経費とすることはできず、家賃のおよそ50%くらいが目安となります。
この場合、大家さんと会社間で賃貸借契約を締結する必要があります。
会社から直接大家さんに家賃を毎月支払い、社長は家賃の負担金を会社支払います。
ただし、広い住宅(床面積が木造で132 ㎡、木造以外で99 ㎡を超える場合)の場合は別の計算になります。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その⑧:持っているものを使おう(決算期変更編)
3 月決算の会社で、3 月に予想以上に大きな売上が見込まれる場合に、これを翌期に計上してしまうと、税務調査の際に否認されます。
1つ合法的に翌期に計上する方法が決算期の変更です。
3 月に大きな売上が見込まれる場合には、2 月決算に変更します。そうすると、3 月は翌期ということになりますから、当該売上は翌期に計上されることになります。
これを実行する場合には、臨時株主総会を開いて定款の変更を行うことと、税務署等
への決算期変更の届出をすることに注意が必要です。
また、株主が多くいる場合には、総会を開催するだけでも大変ではりますが、突然決算期末に大きな売上が上がりそうな場合には、検討する余地はあると思います。
具体的検討:追加の資金が流出しない節税策‐その⑨:持っているものを使おう(前払費用編)
法人税法上、翌期に役務提供を受けるものを当期に支払ったからといって、当期の費用にははならないのが原則でですが、一定の条件に合致した場合には、役務提供を受ける前に支払った額を費用として計上することが出来ます。家賃や保険料、サーバー代、リース料、税理士弁護士等の顧問料など毎月支払いが継続することが契約書で決まっている経費は、期末に翌1年分を前払いすることで全額を費用計上できます。
期末近くになって利益が多く出る見込みがある時は、予め支出することが決まっている来期の費用を前払いすることで当該事業年度の節税を図ることが出来ます。この方法を使う場合は、下記の2つの点に注意してください。
・1年分の経費を前払いするので資金繰りに与える影響を考えること
・継続して翌期も同じ処理をする必要があること
具体的検討:追加の資金が流出する節税‐その①:将来の投資の前倒し化編
ここら先の節税策は、追加の資金が流出する節税策となります。追加の資金が流出するわけですから、資金繰りや財務への影響を検討しながら実行すべき策となります。
まず一番先に検討すべきなのが、将来の投資の前倒し実行です。
将来投資を行う事がわかっていれば、それを今期に前倒しで行ってしまう方法です。
広告宣伝費
将来の顧客を獲得するために広告宣伝を行うことがあると思います。
利益が出ており、来期以降の見込客をさらに増やしたい場合は、当期中に広告宣伝を
行うことを検討してみてください。
なお、広告宣伝費は、「広告掲載日」に費用として計上出来ます。
従って、今期の節税のために広告を出すならば、事業年度の終了の日までに広告が媒体に掲載されている必要があります。
もし掲載日が来期にずれ込めば、来期の費用になってしまいます。
消耗品の購入
経営をしていく上で必要な消耗品を、利益が出た年度に予めまとめて購入する事で
節税につなげられます。例えば、10万円未満のPCを購入して実際に使用をスタートさせれば登記の経費に算入することが出来ます。利益が出た年度に思い切って少額の事務用品を更新してしまうのも手だと思います。
但し、当面の必要数量を超えて多額に購入してしまうと否認されるおそれもありますので、あくまでも必要限度内で購入しましょう。
中古車の購入
上述したように、車などの固定資産と言われるものは一度に経費年て計上できず
減価償却と言われるプロセスを通じて費用化されます。
通常、新車は4年から6年の耐用年数として税務上決められており、その期間を通じて
費用化しますが、中古車は耐用年数の短縮が認めらております。
結論から言ってしまえば、4年落ちの中古車を購入すれば1年で全額が経費となります。
但し、事業年度の中途で買えば、買った日から事業年度の終わりまでの月数分しか
経費参入できませんので、事業年度末近辺で購入すると節税効果が少なくなります。
具体的検討:追加の資金が流出する節税策‐その②:福利厚生編
この節税は、世の社長様が一番多く実行している方法だと思います。利益が出て税金に支払うぐらいなら、従業員に賞与を支払いたい、社員旅に行く、接待・交際費で使いたいなど、必要でないものを買ったり、飲みに行ったり等々。
税金を支払いたくない気持ちもわかりますが、税金を支払うことを敬遠して、節税ばかりしていては、お金が手元に残らなくなり、将来に必要な設備投資をできなくなったり、銀行融資に影響が出てしまいますので、資金繰りとの兼ね合いから慎重に節税は行うことをお勧めします。
決算賞与支給の検討
従業員へのねぎらいと将来のモチベーション向上を期待して、決算賞与を支給することも
節税の一つの方法ととなります。決算賞与が費用として認められるには下記の要件を満たす必要があります。
1.事業年度度終了までに従業員全員に賞与の額を伝えること
2.翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給すること
3.決算賞与の額を未払金として経費に計上していること
決算賞与は税金を減らすことが出来ますが、資金も流出するので支給する金額については
資金繰りとの兼ね合いから慎重に見極めたいところです。
社宅
規定の箇所でも説明した通り、役員・従業員に社宅を提供することで節税につなげられます。この方法は従業員に住宅手当を支給するよりも従業員にとってメリットがあります。
住宅手当を支給されるとその分所得税・住民税が上がりますが、社宅として提供すればその分の負担が少なくなります。
社宅を提供する場合には、3つの条件を満たす必要があります。
まず一つ目の条件ですが、家賃の全額を会社が負担せず一部は従業員に負担して
もらわなければなりません。具体的な金額については厳密な計算が必要となりますので顧問税理士にご相談頂ければと思いますが、家賃の50%を従業員に負担してもらい残りの50%は会社が支払って経費にすれば特段問題ないかと思います。
また、契約上は会社と大家さんで直接賃貸借契約を締結する必要があります。
つまり、会社が社宅として物件を借り、それを従業員に社宅として提供しているという形式にする必要があります。そのため、当然家賃の振込は会社名義で行う必要があります。
まとめると
・従業員にも家賃を一部負担してもらう
・会社名義で借りること
・会社の口座から会社名義で家賃を振り込むこと
の3要件を満たせば、従業員に社宅として提供出来ることになります。
交際費 会議費
交際費と会議費の違いを何となくわかっているけど、具体的にどう違うのか
分からない、という社長さんも多くいらっしゃるのではないのでしょうか?
会議費は全額経費として処理できますが交際費になると一部は経費として認められなくなります。
1人当たりの飲食費の金額を5,000 円以内に抑えれば会議費として全額損金に算入可能です。
例えば、食事に行って3 人で14,000 円だったら会議費となりますが、17,000円
なら交際費となります。つまり、人数によって交際費になったり会議費になったりと、税金も変わってきますから、領収書や帳簿の摘要欄ににどこの誰といったのかというのを記載しておいたほうが良いですね。
社員旅行
頑張ってくれた従業員に報いるため、また結束を高めるために社員旅行に行って節税する方法もあります。
但し、あまりに豪遊してしまうと否認される可能性もあります。社会通念上相当と認められる範囲で行ったほうが無難でしょう。
一人当たり100,000円程度、国内・近隣海外諸国で3泊〜4泊程度の旅行なら問題ないかと思われます。また、従業員の過半数以上が参加していることも必要です。特定の従業員だけ連れて行くとなると、否認される可能性があります。
中小企業倒産防止共済制度
「中小企業倒産防止共済制度」とは、毎月一定の掛け金を払っていれば、得意先が万一倒産となったときに支払った金額の10倍までの資金を貸し付けてくれる制度です。そしてこの掛金は全額経費として損金算入できます。また、12ヶ月以上払っていれば解約しても支払った掛け金の80%、40か月以上払えば支払った掛け金の全額が戻ってきます。なお、掛金が戻ってきた時は、収益として課税対象となります。
掛金は総額で800万円まで積立可能です。
中小企業退職金共済
この制度は、「中小企業退職金共済本部(中退共)」という国の運営する機関に毎月掛け金を支払えば、従業員が退職したときには会社に替わって中退共が退職金を支払ってくれるという制度です。つまり、会社が直接支払うわけではなく、あくまでも外部の基金が支払うことになります。掛け金は従業員ごとにいくら掛けるか決めることができ、その金額は5千円から3万円まで16種類の中から選択可能です。
この制度による支出を全額費用として計上するためには、2条件を満たす必要があります。
①「従業員全員を加入させなければいけない」ということと「②役員は加入できない」ということです。
退職金は1時に多額の資金が出ていくことから、計画的に準備していくのが望ましいです。
まとめ
今まで見てきたように、一口に節税といっても色んな方法があります。また、節税ばかりに目が行ってしまうと財務内容や資金繰りに悪影響を及ぼすことがあります。「節税しなきゃ」と思う前に、将来の経営計画・資金計画やご自身のライフプランをしっかり見据えたうえで行うようにしましょう。幣所では、単なる節税提案は致しません。お客様の経営計画を踏まえたうえ、財務戦略とセットでご提案致します。