会社設立後の役員報酬の決め方について解説

会社設立が無事に完了した方からよく質問を受けるのが、「役員報酬はいくらにすればいいか?また、いつから支払う必要があるのか?」というものです。

役員報酬をいくらにするか?というのは、会社の置かれた状況により自由に決定することができますが、一度決めた金額を年度中自由に増減すること原則として税務上認められておりません。

 そこで、今回は役員報酬について解説したいと思います。

役員報酬の税務上の種類

税務上、損金(費用)として認められためには、下記の方法により支給する必要があります。

1.定期同額給与:月々定額で支払われる役員報酬

2.事前確定届出給与:事前に税務署に届出書を提出することで認められる役員賞与

3.利益連動給与:大会社にのみ認められる、利益に連動した報酬

このように、役員報酬の支給に当たって税務上の規制があるのは、役員報酬を自由に増減させることによって利益操作を防止するためです。

 一般的に多く採用されるのは、「定期同額給与」となります。そこで、今回はこの定期同額給与制度についてみていきたいと思います。

定期同額給与とは?

 定期同額給与にするためには下記の要件を満たす必要があります。

・毎月の支給額は一定額にする。

・改定する場合は事業年度開始から3ヶ月以内に1回だけ改定が可能。

・事業年度開始から3ヵ月過ぎた場合に増額すると、増額部分は経費として認められない

 (あくまでも増額部分が否認されるだけで、増額する前の金額は経費として認められます)

ケーススタディ

それでは、具体的なケースで説明したいと思います。会社の決算期は3月とします。

ケース1:毎月の役員報酬が一定額の場合(毎月の役員報酬額を100万円とする)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100

 これが所謂定期同額給与の基本ケースとなります。毎月一定額を支給しているので、

全額の1,200万円が経費として認められます。

ケース2:途中から増額(4月-12月まで毎月100万円、1月-3月から150万円とする)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
100 100 100 100 100 100 100 100 100 150 150 150

上述したように、期の途中で役員報酬を増額した場合、定期同額部分として増額前の100万円部分は経費として認められます。一方、1月から増額した50万円については定期同額給与とはならず、この50万円×3か月分の150万円は経費として認められません。

 結局、ケース1の場合と同じ1,200万円部分のみが経費として認められます。なお、上記のような支給形態でも支給すること自体は可能です。

ケース3:期首から3ヶ月以内に増額した場合(4月・5月は100万円、6月から150万円とする)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
100 100 150 150 150 150 150 150 150 150 150 150

4月と5月は100万円を支給し、6月から150万円とした場合、前述したように事業開始から3ヵ月以内の改定なので、増額前の100万円も増額した後の150万円も全て経費として認められます。

役員報酬の決定について

役員報酬は会社法の規定により、あらかじめ定款で定めるか、株主総会の普通決議で決める必要があります。定款で定めてしまうと、変更する場合に定款変更の株主総会特別決議を経る必要があるので、通常は株主総会の普通決議で決めます。

決議内容は、各取締役の報酬額と報酬の支払時期となります。なお、取締役会設置会社では

報酬総額だけ株主総会で決議し、具体的に誰にいくら支払うのかは、取締役会に一任することができます。また、取締役と監査役の報酬決議は別々に経る必要があります。

 一度総会で報酬額の決議を経たら、変動する場合を除き毎年決議を経る必要はありません。なお、株主総会議事録は作成する必要はありますが、税務署への届け出義務はなく会社にファイルリング保管してあれば問題はありません。

設立初年度の役員報酬について

 会社を設立した場合、設立後3ヵ月以内に報酬額を決める必要があります。

設立したばかりだから、役員報酬は様子を見ながら決めたいという気持ちもあるでしょうが、設立後3ヵ月以内に毎月の支給額を決定する必要があります。それでは未払にして、

後から支払えばいいのでは?と、思われるかもしれませんが、未払の役員報酬が長い状態続いていると経費として認めらません。

 会社を設立した方からよく質問を受けるのが、役員報酬はいくらにするのがいいのか?

と聞かれますが、これは会社や役員の方の状況によりけりで一概にいくらにするのがいいのか、言い切れないものです。低すぎると生活が出来なくなるでしょうし、高すぎると所得税に加え社会保険料も高くなります。何より会社の資金と損益見通しによって変わります。

 そのため、設立する前から役員報酬をいくらにするか?税理士と相談しながらシュミレーションするのがいいでしょう。