リバースチャージ 方式 について解説します

Googleやアマゾンなど、海外からwebサービスの提供を受けた場合の消費税処理について-リバースチャージ方式とは何か?

リバースチャージ方式とは何か?

平成27年消費税改正前の消費税法では、国内取引になるかどうかの判定基準が、「役務の提供を行う者の事務所等の所在地」でした。そのため、GoogleやFBの広告サービスを海外から提供を受けてお金を支払っても消費税は課税されませんでした。

しかし、平成27年に消費税法が改正され、電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供(電気通信利用役務の提供)の消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準が、役務の提供を行う者の事務所等の所在地から「役務の提供を受ける者の住所地等」 に変更されました。

これにより、「電気通信利用役務の提供」については、「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「消費者向け電気通信利用役務の提供」の2つに分類され、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合には、リバースチャージ方式と呼ばれる課税方式が適用されることになりました。

リバースチャージ方式とは、国外事業者から役務の提供を受けた国内事業者が申告・納税を行うことであり、これにより、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供(これを特定課税仕入れという)を受けた場合、サービスの受け手である国内事業者に消費税が課され、申告を行う事になりました。

また、「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、原則仕入税額控除の対象外となりますが、「登録国外事業者」から提供を受けるサービスについては課税仕入として取り扱われることになりました。つまり、消費者向けのサービスについては、国外事業者に申告納税義務を課し、国外事業者が日本の税務署に申告・納税を行います。

このような改正が行われた理由は、国内事業者が国内事業者へ電気通信利用役務の提供を行った時は消費税が課税されるのに対し、国外事業者が国内事業者へ電気通信利用役務の提供を行う時は消費税が課されないため、国内事業者にとって競争上不公平な状況があったため、競争上の公平性を担保するために行われました。

リバースチャージ方式は「事業者向け電気通信利用の役務の提供」を受ける国内事業者全てに適用されません。

下記の場合は、リバースチャージ方式による申告は必要ありません。

  • 課税売上割合が95%以上の事業者
  • 簡易課税制度を選択している事業者
  • 免税事業者

リバースチャージ方式は経過措置により、課税期間において一般課税(本則課税)により申告する場合で、課税売上割合が 95% 未満である事業者にのみ適用されます。

つまり、課税売上割合が 95%以上の場合には、電気通信役務の提供取引は無かったものとされます。リバースチャージ方式に係る消費税の納税義務が免除されるとともに、仕入税額控除の対象にもなりません。

簡易課税制度が適用される事業者については、特定課税仕入れはなかったものとされ、免税事業者は納税義務が免除されていますので、リバースチャージ方式による申告は必要ありません。

リバースチャージ方式の具体的処理

では、次にリバースチャージ方式の具体的な仕訳処理についてみていきましょう。

①課税売上割合が95%以上の場合の仕訳処理

まず、課税売上割が95%の事業者はリバースチャージ方式の対象外ですが、仕訳として認識する場合の処理を考えてみます。

リバースチャージ方式の仕訳

例)海外の事業者から日本の事業者へ税込10,800円の「事業者向け電気通信利用の役務の提供」として広告サービスを受けた場合

国内事業者は請求額のうち消費税を除いた金額を支払い、 消費税部分について国外事業者に代わり申告・納付することとなります

仕入時

(借方)広告宣伝費    10,000/(貸方)買掛金     10,000

(借方)仮払消費税   800/(貸方)仮受消費税     800

仮受消費税を計上するのは、国外事業者の納税分を一旦預かり、仮払消費税を計上するのは、課税仕入(特定課税仕入)に該当し、仕入税額控除の対象になるためです。

つまり、預かった消費税が800、支払った消費税も800と見做し、結果として消費税の納付額は0となり、下記のように相殺されてしまいます。

(借方)仮受消費税     800/(貸方)仮払消費税     800

②課税売上割合が95%未満の場合仕訳処理

たとえば課税売上割合が80%で、広告宣伝費が課税売上と非課税売上の共通経費だったと仮定します。この場合、控除できる仮払消費税は800×80%=640円となり、残りの160円は控除できません。

仕入時

(借方)広告宣伝費    10,000/(貸方)買掛金     10,000

(借方)仮払消費税   800/(貸方)仮受消費税     800

(借方)雑損失160    /(貸方)未払消費税 160

 つまり、預かった消費税が800、支払った消費税を640と見做し、差額の160を消費税として納付します。

 これまで見てきたように、課税売上割合が95%未満の企業が「事業者向け電気通信利用役務の提供」を国外から受けた場合、サービス料のほか消費税を別途納付する必要が出てくるわけです。これにより、国外事業者から購入した場合と同じ条件になるようにしようとしていることがわかります。

リバースチャージ方式「申告の方法」

①課税標準額を計算する。

課税売上高に特定課税仕入にかかる支払対価を算入し、課税標準額を計算する。

上記の例の場合、10,000円を算入します。

②仕入税額控除の対象

→特定課税仕入は仕入税額控除の対象になるため、課税仕入れとして扱いましょう。

消費者向けの役務提供を受けた場合の取扱い

国内事業者が国外事業者から、「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合 、国外事業者が登録国外事業者であれば、役務の提供に係る課税仕入れについて仕入税額控除を行うことができ、登録国外事業者でない場合は、仕入税額控除を行うことができません。

※登録国外事業者

一定の要件を満たした登録国外事業者から受けた役務提供だけに国内事業者側での仕入税額控除が認められます。国税庁長官は登録国外事業者の名称等を、インターネットを通じて公表しています。

まとめ

 如何でしたか?海外から「電気通信利用役務の提供」を受ける場合、事業者向けか消費者向けかによって、消費税の取扱いが異なりますので、サービスの性質をよく踏まえた上で処理を考えるようにしましょう。